律令国家の儀式音楽として声明とともに中心的な役割を担った。宮廷を中心に行われた音楽だが、大寺・大社の祭礼の儀式でも演奏された。成立や用途の系統から「アジア大陸系舞楽」、「平安朝の新作の歌曲」、「神道系の祭礼用歌舞」がある。今日まで伝承されている雅楽の主体は管絃と打楽器による器楽合奏で、それに舞が伴ったものとなっている。舞楽は雅楽の中で最も規模が大きく、狭義の雅楽はこれを意味する。これらは全て現在は宮内庁式部職楽部で取りあつかわれている。

舞楽は左方の舞と右方の舞に分類されるが、舞の性質により、ごく普通の一般人の舞、武人の舞、子供の舞といったふうにさらに細かく分けることもできる。 左方の舞は唐楽と呼び、中国もしくはインド起源の楽曲と、この様式に準じた国内作品を含む。赤が衣装の基調をなす色彩で、舞人は左方から入場する。舞は三つの打楽器と三つのリード楽器で伴奏される。舞楽の場合、太鼓ではなく大太鼓がつかわれることもしばしばある。大太鼓とは、漆を塗った曲線の台に吊り下がった、直径180センチほどの太鼓である。
右方の舞は高麗楽と呼び、朝鮮起源の楽曲と朝鮮的な様式による日本の作品から成る。衣装の基本色彩は緑で、舞人は右方から入場する。音楽面においては、笙は用いず、羯鼓は三の鼓(朝鮮起源で羯鼓より少し大きい)に換え、横笛でなく高麗笛(横笛より小さく六孔である)を使う。


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雅楽の中では最も世間に知られた曲である。唐楽の小曲であるが舞をもたない。唐から伝えられた時は平調(ヒョウチョウ)であったが、11世紀の終り頃、盤渉調(バンシキチョウ)に移調され、後にまた黄鐘調(オウシキチョウ)に移調されたので、現在では三通りに演奏される。
この越天楽に歌を当てて唱うものを「越天楽今様」という。この「越天楽今様」の俗化したものが民謡の黒田節である。なお、この演奏形式で三回繰り返し演奏する間、一回目は全員で演奏するが、二回目からは打楽器が休止し、筝の奏者以外の各楽器も、その主奏者だけの演奏となるが、二回目からの演奏途中に笙が吹奏をやめ、続いて笛もやめる。三回目からは筝の奏者と琵琶・篳篥の主奏者だけが残り、篳篥がとぎれとぎれに吹奏して、曲の終りには筝の主奏者が「弾止之手」を奏して終る。
宮内庁式部職楽部


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相撲や歌舞伎などの興行の最終日を千秋楽というので、馴染み深い曲名である。風俗所領の王監物頼吉が後三条天皇の大嘗会のとき、勅によって作ったといわれる。相撲、法要の最終日に演奏されるので『千秋楽』と呼ばれるといい、また中国の皇帝の誕生日(千秋楽節)に用いたことに由来するともいゆう。小曲で舞いはない。
宮内庁式部職楽部