正しくは猿楽太鼓といい、能楽、長唄、神楽などの囃子に広く使用される。この種の太鼓は、推古天皇の時、百済の味麻之が伝えた伎楽のなかに「腰鼓」として使用されていたので、その頃伝来したものと思われる。その後に田楽や猿楽にも使用され、室町時代に入って能楽の樹立とともに改良され、「四拍子」のひとつとして発達する。この楽器が長唄の囃子に使用されたのは、江戸時代になってからである。

胴は欅、松、時として栴檀で作り、中央がやや膨らんだ円筒形で端面の直径八寸四分(25.5cm)、中央のやや膨らんだ部分の直径八寸九分(27cm)、高さ約四寸八分(14.5cm)が標準の大きさです。外面には漆塗りで蒔絵を施したものもある。革は牛皮を使い円形で周りは鉄の輪に巻き付けてある。革面の直径一尺一寸五分(35cm)で、その周囲は約一寸五分(4.5cm)は漆塗りしてある。また表面には直径4cmくらいの円形の鹿皮(調子革)が貼ってある。革面の周りには八個の孔があり調べ緒で交互にかがって締め上げて楽器を使えるように整える。紐の色は通常、紅であるが、江戸時代には名人には紫の紐が許されたという。

この太鼓、古くは他の人に持たせて打ったといわれるが、現在は「挟台」に固定して使う。胴と二枚の革面を調べ緒で締め付け、これを桴(桧)で打つ。