JTRAD 047

明治の大通(大通人の意味)と言われた平岡吟舟の作詞作曲になる小唄。二上りの曲。
出だしは、源氏物語に題をっとった謡曲『葵の上』の一声を取り入れて、謡ガカリで重々しく、幾分凄みを持たせて出るが、「〜そら出た、生霊なんぞは、おお恐や」と早間に軽妙にくだけてゆく面白さが聞き所である。『葵の上』というのは光源氏が若い時に結婚した女性で、源氏の本妻であったが、六条の御息所の生霊によって取り殺された。『三つの車』というのは、仏教の方でいうことばで、迷いに満ちたこの世から衆生を救い出す教えを車に譬えたのである。
唄/千紫千恵、三味線/千紫弘恵