| | JTRAD 045 |
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うた沢のレパートリーとしては、寅派・芝派の両派に存在する。最初は本調子で出て、途中のフレーズから三下がりに転ずる。寅派と芝派では歌詞に多少の違いが見られる。
渡辺の綱が主君頼光の上意を受けて、羅生門に出没する鬼を退治に出かけて行くと、後から綱の兜の錣を掴んで引き戻そうとするものがある。出だしは綱の鬼退治であるが、よしてくれ、離してくれ、錣が切れる、という思いがけない綱の弱音から一転して今結ったばかりの髪の鬢の毛がほつれてしまうと悲鳴をあげる。羅生門から一転して、吉原の中の下級の遊女が並んでいた羅生門河岸を素見していて、女郎につかまった漂客の滑稽な姿へとくだけてゆくところに、何とも言われぬ面白味がある。江戸っ子のユーモアの典型と言える。
曲は義太夫の手法を真似ているので、「曲者に諸手をかけ」までは重々しい義太夫の調子である。この曲は、元来は地唄の中の「作もの」(おどけもの)として作られたものだが、幕末頃江戸に入って歌詞が変り、江戸端唄として大いに流行したものであった。それをうた沢節に改調したものである。
唄/哥沢芝金、三味線/哥沢芝嬢
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