JTRAD 032

義太夫の竹田出雲作「芦屋道満大内鑑」(* 義太夫の項参照)の一節、「小袖物狂いの段」を篠田金治が改作し、初代清元斎兵衛が作曲した。文化15年(1818)江戸都座で三世尾上菊五郎が「深山桜及兼樹振(みやまのはなとどかぬえだぶる)」の題名で初演した四季七変化の春の部「小袖物狂」がこの曲。保名(やすな)と呼ばれている阿部保名は、その愛人榊の前の死から悲嘆のあまり気が狂い、榊の前の小袖を抱きながら幻影を追い、菜種の花咲き香る春の野辺を狂い歩くという筋で、清元初期の名作である。
浄瑠璃/清元登志寿大夫、三味線/清元邦寿